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Short Essay 「文章の推敲」

 大学生は卒業するのに卒業論文という長い作文みたいなものを書かないといけません。この卒業論文というのが、きちんとした文章を書く初めての機会になります。これは書きながら先生に添削してもらい、またその部分を書き直すという形で仕上げていきます。私も卒業論文を書きましたが、先生は細かいところまで本当によく見てくれました。私の場合、毎日朝まで卒業論文を書き、先生が大学に来る前に提出、その後いったん家に帰って睡眠をとり、それからまた大学に行ってました。そうすると先生が添削してくれた卒業論文の原稿が机に置かれてますので、またそれを見て朝まで修正と書き直しを行います。人にもよるのですが、私は 1 週間これを繰り返して卒業論文を書き上げました。これは昼間に家に帰れるだけましで、人によっては 3 日間家に帰ってないという強者もいました。先生は「文章というのは推敲すればするほど良くなるんだよ」と言いながら私の論文を見てくれました。本当にその通りで、見てもらって書き直す度に内容や文章がよくなります。ただ、添削のたびに良くなるのはわかるのですが、何回出しても必ず修正されて返ってきます。1 回目 2 回目はいいのですが、これが 4回目 5 回目となると、これはいつまで続くんだろうとある種の絶望に襲われます。そうすると先生から、「文章の推敲に終わりはないんだよ。あるのは締め切りだけ」というありがたいお言葉がでてきます。そうです、この、添削→修正→添削→修正…というサイクルを終わらせられるのは、文章うんねんではなく、唯一締め切りだけなのです。締切日というのは始める前までは憂鬱な重しでしかありませんが、始まってしまったら救いであり、暗いトンネルから抜け出せる唯一の手段なのです。卒業論文に限らず、どのような文章でも私にとって締め切りはいつも開放でした。今、自分が学生の論文を添削する立場になりましたが、なかなか当時の先生のように何度も何度も添削をすることができません。あの、「文章の推敲に終わりはなく、あるのは締め切りだけ」という言葉を聞かせてもらえた自分は幸せだったと思います。私も学生にそう言ってあげられるようにがんばらないといけません。  (K.)